起立性調節障害(OD)で来院 (中学2年生 女性)

起立性調節障害(OD:Orthostatic Dysregulation)は、主に自律神経の乱れによって血圧や心拍の調節がうまくいかず、立ちくらみ・倦怠感・頭痛・めまい・朝起きられないなどの症状が現れる疾患です。特に小中学生・思春期の子どもに多く見られますが、大人でも発症することがあります。
カイロプラクティックでは、神経系へのアプローチを通じて自律神経のバランスを整えます。当院では、カイロプラクティック+栄養+運動という3つの側面から施術を行います。
主訴
- 朝起きられない、めまい、頭痛、倦怠感
- 病院では「自律神経失調症・OD」と診断。薬は処方されるが効果が乏しい
- 運動不足・偏った食生活(朝食抜き、菓子パン中心)・猫背・スマホ使用多め
検査・初見
自律神経系の指標
検査 | 内容 | 所見 |
---|---|---|
血圧測定(起立試験) | 仰臥位・起立直後・3分後で比較 | 起立後の血圧低下・心拍上昇が顕著ならODの可能性高い |
心拍数 | 安静時に高め(80〜100bpm) | 交感神経優位の可能性 |
皮膚温度左右差 | 末端冷えの確認 | 自律神経不均衡の一指標 |
呼吸数・深さ | 胸式呼吸が優位、浅い呼吸 | ストレス過多・交感神経優位 |
姿勢分析
観察部位 | 所見例 | 意味 |
---|---|---|
頭部 | 前方突出(ストレートネック) | 頚椎の自律神経系への負荷が増加 |
肩の高さ | 右肩下がり(利き手関与)、巻き肩 | 胸郭の狭小化、浅い呼吸 |
背中 | 背中が丸い(円背)、猫背傾向 | 胸椎の自律神経支配の不均衡 |
骨盤 | 右後方回旋・高低差あり | 脊柱全体の配列に影響 |
膝・足 | O脚・偏平足、荷重の左右差 | 重心の崩れ、自律神経の代償性反応 |
触診・モーションパルペーション
- 頚椎C1・C2の可動制限 → 交感神経支配と関係
- 胸椎T1〜T4の可動性低下 → 心臓・肺・交感神経節と関係
- 背部の筋緊張(僧帽筋・肩甲間部) → 交感神経過剰な反応
筋力・柔軟性評価
テスト | 内容 | 所見例 |
---|---|---|
スクワット | 自重でできるか | 下肢筋力低下、バランス不良 |
立位前屈 | 柔軟性・姿勢評価 | ハムストリング短縮、骨盤後傾 |
バランステスト(片足立ち) | 自律神経機能・固有感覚 | 揺れが強ければ神経系の機能低下あり |
施術
1. 姿勢矯正・背骨のアライメント調整
- 背骨や骨盤の歪みを調整し、神経伝達の円滑化を促進
- 特に**頚椎(首)や胸椎上部(T1〜T4)**は自律神経に関与
- 猫背姿勢やストレートネックが交感神経優位を招くため、胸郭の拡張・首のアライメントを改善
2. 自律神経バランスへのアプローチ
- 副交感神経の働きを高める目的で、仙骨部や迷走神経支配領域へのソフトタッチな施術
- 頭蓋仙骨療法(クレニオセイクラルセラピー)を併用するケースも
3. 呼吸・循環促進
- 胸郭の可動性改善 → 呼吸が深くなる → 迷走神経活性 → 副交感神経優位
栄養指導のポイント
1. 朝食の見直し
- 朝の低血糖による立ちくらみ・頭痛を防ぐ
- **タンパク質+複合炭水化物+ミネラル(塩分)**の組み合わせを推奨
2. 塩分・水分補給
- 起立性低血圧に対して、ナトリウム摂取を増やすことで血液量を増やし循環を改善
- 水分は1日1リットルを目安に
3. ビタミン・ミネラル補給
- ビタミンB群、マグネシウム、鉄、亜鉛などの不足が自律神経の不安定さを助長する
- サプリメントの使用も視野に入れる
運動療法の指導
軽度の有酸素運動
- 朝起きた後にストレッチや軽い散歩
- 無理に激しい運動はNGだが、ある程度の運動を推奨
ストレッチ&呼吸法
- 横隔膜を意識した深い呼吸(腹式呼吸)を取り入れることで副交感神経優位に
- スマホ・ゲーム時間が長いことで交感神経優位 → 使用時間制限とストレッチの推奨
施術例の流れ(週1回 × 2ヶ月)
期間 | 施術内容 | 患者の変化 |
---|---|---|
初期(1〜3週) | 姿勢矯正、頚椎・骨盤調整、軽いストレッチ | 朝の頭痛・めまいがやや軽減、呼吸が深くなる |
中期(4〜8週) | 呼吸法・運動の推奨、栄養指導スタート | 朝食を食べるようになり、日中の倦怠感が減少 |
後期(以降〜) | 姿勢安定、運動習慣化 | 朝起きる習慣が定着、不登校の改善傾向 |
まとめ
背骨や骨盤の歪みを整えることで神経の働きを改善し、自律神経のバランスを正常化することができたと思います。
起立性調節障害には、栄養は神経の働きや血圧の安定に直結するため、回復には欠かせません。
- 朝食を取ることで血糖を安定させ、朝の立ちくらみや倦怠感を予防
- 塩分・水分の補給は、血液量を増やして循環を改善(ODでは特に重要)
- ビタミンB群、鉄、マグネシウムなどの栄養素は神経の安定やエネルギー代謝に必須
軽い運動は、自律神経の調整と血流改善に効果的です。
- 散歩やストレッチなどの軽い運動は、交感神経と副交感神経の切り替えを助けます
- 運動によって生活リズムが整い、睡眠の質も向上します